2016年1月3日日曜日

共同通信社の新年記事と、患者支援のこれから。イノベーションを起こしたい 理 由。

新聞の新年特集記事に掲載いただき、読んだ方からの反応を頂いております。

2016年正月 長崎新聞記事 株式会社PEER佐藤真琴
共同通信社の取材記事は、全国どこの新聞に掲載されるかわからないのですが、どうやら長崎新聞に掲載されたようです。遠くの方からもご意見を頂くことができて、少し前向きな気持になりました。いつも、コレで正しいのかどうか、心の何処かで不安もある小心者の小生です。

トライしたことの価値を評価されるのが若手チャレンジ枠とすると、成果で評価されるのがトップランナー枠です。トップランナー枠で語られるくらいの成果を出し、患者さんと、その日常生活を支えるすべての人を少しずつ幸せに出来るような仕事をしたいのですが、まだまだです。

今年のお正月は、ニュースになることの少ないわたしの仕事について新聞掲載いただいたいい機会なので、なぜトップランナーと言われるくらいのイノベーションを起こしたいと考えるのか、少し書いてみようと思います。

私がこの仕事を始めたきっかけは、看護学校の実習中に白血病の患者さんに出会い、その方から
「死にゆく人が沢山お金を使うと、生きていく人が困る。だからウィッグは買えない。」と言われた事がきっかけです。本気で調べたり、考えたりしましたが、私には患者さんのニーズにあったウィッグの提案ができず、悔しい思いをしました。
看護の教科書には、脱毛の副作用のある患者さんには帽子やウィッグを提案し、その人らしい生活を維持できるように情報提供しましょう、と書かれていましたが、実際にはできない。このギャップを埋めたいと思ったのが最初のきっかけです。

そこから始まり、患者さんとのやりとりや、患者さんを支えようとする看護師はじめ医療チームの皆さん、美容師などの地域の事業者さんを知っていくうちに、このまま商品だけ提供しても根本解決はしないと気づきました。みんな、目の前のケースに必死ですが、それを全体像として捉えていないので、結局明日も、明後日も、来年も、同じように困る患者さんが出てくるし、医療チームや事業者はそれを追いかけて手当てをしているのです。

乳がんだけでも年間7万人以上の患者さんが毎年発生しています。
来年も、再来年も、おそらく同じくらいの数の患者さんが発生します。ということは、根本的にこの10万人弱の人たちが困らないようなインフラを整えないことには、同じように困る人が出てきます。

当初から、今困っている人の今を解決することに注力し、ウィッグを提供できるインフラを整え、製品供給をして、事業化しました。現在、全体の5%にも満たない人数ですが、供給出来るようになりました。

こうして事業をつづけていくうちに、患者さんを支える仕組みの脆弱性に気づきました。患者さんの日常生活を支える仕事は、患者さんを支える人たち、つまり医療チームや事業者の個人の力量にかなりの部分で依存しているのです。いい人にあたればラッキー、そうでなければアンラッキー。医療だったら絶対に許されない質の不安定さが、日常生活部分では当たり前に許されています。
支える側の人的素質である善意や個性に支えられているというのは、非常に不安定であり、これは抜本的にシステム改善が必要だと考えています。本気でやっている人が疲弊して、自己犠牲で潰れていくような現状の仕組みを、ぐっと変えたいのです。

がん診療だけではありません。医療が進歩し、医療とともに生きる人が増えてきました。病気になって医療をうけたときに、新しいその人らしい生活がスムーズに始まり続くような日常生活支援があれば、安心して生きていくことができます。一番大事なことは、その人らしく納得して生き続けていくことです。

そのために、患者さんを支える仕事の抜本改善を目指し、医療現場における日常生活支援タスクを病院外で引き受ける仕事づくりを始めています。今までは看護師が中心に担ってきて、本当は現場でやりたいけれどもやりきれていない支援を、病院の外で事業化していきます。事業化については検討段階ですが、順次公開しながら、周囲のサポーターの皆さんと3倍速で進めていきます。

このイノベーションを通じ、患者さんの生活が豊かになることは勿論ですが、それを支える専門職の仕事をシェアして、皆さんが少し楽になり、結果としてケアのクオリティが上がることが目標です。現場看護師は、貴重な医療資源です。これからさらに専門細分化が進む看護師を支え、これからの医療の質向上に貢献したいと考えています。