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医療と生きる全ての人に向けて、患者さんの日常生活支援を事業化しています。抗がん剤治療中や脱毛症向け専門美容室PEERと、患者さんの困りごとをモノ・コト・場所で解決する事業で、医療と生きる日常生活を豊かにする仕事をしています。 このブログでは、日々現場仕事をしながらに気になることを、個人的に書いています。看護師/工学修士(MOT)  ■History 2008静岡県男女共同参画社会づくり活動に関する知事褒賞 2009日経ウーマン ウーマンオブザイヤーキャリアクリエイト部門5位 2009経済産業省ソーシャルビジネス55選 2010日本商工会議所女性起業家大賞特別賞 2013内閣府女性のチャレンジ賞 2014静岡ニュービジネス大賞特別賞 2015イノベーター公志園4期  2016TEDxHamamatsu2016スピーカー

2016年5月9日月曜日

病院売店の機能を拡張して気付いたこと。

2年前からある総合病院の売店を運営しています。病院売店は来店する利用者だけでなく、病院に関わるすべての人の役に立てるはず、という仮説のもと、思いついたら担当部署に営業をかけて、小さくトライしながら1つずつ収益化するという地味な作業を繰り返し現在なんとか黒字をキープしています。

もともと、この売店は絶対赤字になると言われていた物件です。大手コンビニさんが手を引く中、それでも、どうしてもやりたかった理由はいくつかあります。

この病院は高齢化と過疎化の進む中山間地域と市街地の境目あたりにあります。
病院の周辺は立地に恵まれて子育て世代の流入が活発で、人口増加をつづけています。住民満足度も高いです。近くには医科大学附属病院のほか、ドクターヘリをもつ病院、中サイズの総合病院にクリニックも多く、住民の医療環境はかなり恵まれています。

一方で、高齢化がすすみ限界集落に近いような地域が山の方にひろがり、そちらから通院してくる患者さんも抱えています。山に住めなくなった高齢者がこの病院近くのエリアにある介護施設に入所し、通院もしています。専用のバスも周辺5キロを巡回しており、慢性疾患をもち通院しながら暮らす高齢者の生活を支えています。

そんな病院の中にある、小さな売店で何ができるのか。

まず、売店を楽しくしています。売店は必要な物が揃っていることが最低条件ですが、それだけではつまらないです。リピート率が高く競合のない店舗だからこそ、自由にチャレンジができるはず。ということで、楽しくしてみました。


看板を楽しくして


スタッフがいろいろ企画





























院内イベントの調達も引き受けます。

なんでもやって、やれることを信頼してもらい、さらに営業をかけていきました。関連の介護施設に、出張売店をやらせて欲しいと提案しても最初は受け入れてもらえませんでしたが、徐々に乗ってきてくれました。

そして、今は2つの関連介護施設で訪問販売をしています。
自分で買い物ができる人が多い施設には、週1回商品をもって伺います。
正味1時間ですが、皆さん代わる代わるやってきて、話をしたりおやつや生活用品を買ってくれます。レクリエーションの一つになっているようです。

デイルームに出張売店がやってきます。楽しいです。















もともと売店にある商品なので、新しい仕入は発生していません。決まった注文は先に連絡をもらい用意していきます。カフェオレ6本、酒まんじゅう6個、ういろう4本、サイダー数本、こんなまとめ買いや、おむつやティッシュなどの生活用品もお届けしています。

施設に出張コンビニはよく聞きますが、それによく似ています。近くに病院売店があれば、スタッフの少しの工夫で訪問販売は成立します。実店舗から商品をもっていくので、新しい投資をしなくてもいいですし、なにより売店の売り上げが上がることが一番のメリットです。

病院の売店には、ケアに使う特殊な介護用品もそろえてあります。自費で用意する、介護生活に必要なものです。口腔ケアスポンジから専門の洗口剤、フィルムドレッシング剤、そのほか取り寄せも可能ですから、かなりの範囲をカバーできます。

ここで大事なことは、課題解決をしながら事業が成立するということです。たしかにネットの宅配サービスでも良いのですが、人がやってきて、話したり、提案したり、答えたりしながら気持よく続いていくサービスを作ることを考えると、病院売店のほうが向いています。売店は単体で事業が成立しているのですから、枝葉の事業へのチャレンジはハードルが低くやりやすいのです。そうして内側に近い場所から医療介護現場を見ていると、まだまだ病院売店の機能は拡張できます。もちろん、収益化しながら、です。

そして現在、私たちは施設に入っていない人に対してもアプローチをしています。
在宅で介護を受けている人も、病院にはやってきます。その人達が、次の外来の時に取りに来るから取り寄せておいて、というお取り寄せに対応しています。特殊なものではありません。大きめのお菓子をたくさん、きんつば5個、おむつ2袋、杖の替えゴム、その他諸々。必要なもので私たちができることは、原則取り寄せておきます。
本も雑誌も、お菓子も同じです。全部その人が必要なものです。

売店をやるまでは、買い物が難しくなっても殆どの物はネットで注文、お取り寄せで対応できることだと思っていました。でも、それが難しくなるのが老いるということでした。このような困り事に現場がちょっと気付いて、一手間かけると、新しい事業展開になります。

事業で実際に動かしてみるとよくわかることがあります。必要なもので値ごろ感があるもの/ことしか売れません。アンケートよりもずっと正直でシンプルです。

介護施設に出張して販売したら、入所者も喜ぶし私たちも利益が上がる。すぐに思いつくことですよね。ですが、実際にやってみてこそ信ぴょう性が上がります。それが本当に役に立っていたら、利用者さんはとても喜んでくれます。施設のスタッフさんが売店に直接やってきて、あれこれ方法を提案してくれます。

病院売店は病院組織から独立していますが、近い立場です。その内側に近い立場だからこそ気づくことがあります。そして、組織がどうしたら動きやすいのかも考えられます。
新規事業は全く新しいところにチャレンジするのもひとつですが、まだまだ周辺には掘り起こせる隠れたニーズが眠っているのではないでしょうか。

課題解決事業というとものすごく難しく聞こえてしまいますが、実は手法はたくさんあり、それはすでに周辺事業を行っている既存事業者がトライしたらやりやすいのです。言うだけよりも、実際に楽しい現場を持続可能な形で作っていたら、営業しやすいです。本気で変えようと思ったら、見える形で現場を作るのも一つの手法です。