2015年10月26日月曜日

MOT授業にて。コピー製品を作られたら?形を作る技術は真似できるけどね。

久しぶりに母校!静岡大学工学部MOTの授業でした。
学生さんとのセッションは私のほうが勉強になることも多く、楽しい授業でした。MOTらしく、社会人学生が3/4ですので、各業界から見た考え方の違いがよくわかり、とてもエキサイティングです。


静大MOTのメイン棟。静岡大学浜松キャンパスの西奥にあります。
この日は、風が強くて雲一つない晴天でした!


ものづくり、というのはその名の通りものを作ることです。ものづくりの「形を作る技術」は3Dプリンタを筆頭に、低コスト・短納期・少単位でものを作り始められるようになりました。昔は1ショット1000個〜数万個(1個の金型で作る最小発注単位)だったものが、多少単価は高くなりますが、数個からでも作ることができます。初期ロットのリスクを下げられます。この辺りは専門外なので、勘違があったらご指摘ください。

さて、閑話休題。

上に書いたとおり、形のあるものは、その気があれば比較的低コストで形を真似ることができる、というこの時代。学生さんから「頑張って作ったものを真似されたらくやしくないですか?」「バラしたら真似できる」ともっともなご質問を受けました。(形を作る技術は真似できる)

特許をとる、という方法もありますが、特許はとるまでに大変、とってからも維持コストがかかる、真似されたら裁判を起こして初めて効力発揮、などなど、国際社会的にはよっぽどの特別マル秘技術以外には大して効果がないのではないか、というのがわたしの持論です。特許を取る人の自己満足ならば、いいのですが、事業的にメリットはどの程度あるのでしょうか。

弊社のターゲットユーザーの場合、患者さんたちの生活を良くするためには、特許をとることよりも、それが市場で認められて浸透し、いつの間にかあって当たり前のモノ・サービスになる方がいいと思うのです。

このように、浸透して基準技術になることを、標準を取る、と言います。

標準になれば、当然真似されて改善されます。Aという技術なら、A’になったりA''+@になったりします。(おまけが付くこと。)
そこからもう一歩言ってBになるかもしれない。(進化して形が変わること)

それもOK。技術そのものは盗める。でも、それを最大価値化した市場の姿のイメージは私たちの頭のなかにしかありません。
you cannot steal the image in our head.
(頭のなかにあるものはぬすめないよ!)

MOTには2つのテーマがあります。1つは、現場の生産効率最大化、つまりものづくり現場改善。もう一つは、ものづくりの価値最大化、つまり商品・サービスを市場で最もかっこよく動かすディレクター役割。

ものづくりの価値最大化を考えると、もの自体はツール。
ツールのクオリティが高くて、顧客ニーズにマッチしていることは当然。そのツールが顧客の毎日の、どのシーンで、どのくらい、どんなニーズにマッチして、人々の生活をハッピーにするのか。

アップルiPhoneは、まさにこれです。
iPhoneを中心として、使う環境そのものをつくった。
毎日の生活をiPhoneが変えた。

しかも、いろんなサードパーティが入り込んでくる仕組みを作って、自転させている。大枠をつくって、成長パーツは市場に任せる。そのおおらかな自信を私は本当に羨ましいと思う。自信をもって、ここまで懐開けるか、と。

結論は、物自体は盗めるかもしれませんね。
でも、ものを使った市場へのアプローチ全体像は真似しにくいと思います。

布もののものづくりには、そんなにすごいコア技術はありません。
でもピアとPRODは、市場と個人個人のニーズ、組織の動き、業界全体の動き、それを人単位で見て必要なことを作っている。現場改善のためにツールとしてものづくりを考えているから、ものづくり自体は真似されてもビジネスモデル全体は真似できない。
もし出来たら、その程度のものだったってことです。

腹をくくって、懐開いて市場の改善のために価値最大化しましょう。
日本のものづくりはレベル高いです。QCもすばらしい。
コピーは作られます。そこは諦めよう。