大統領の料理人を見て、あーって思ったのでメモ。ネタバレるので、映画を見る予定の人は、読まないで。
”『大統領の料理人』(だいとうりょうのりょうりにん、Les Saveurs du palais)は、2012年のフランスの伝記映画。 フランス大統領官邸(エリゼ宮殿)史上初の女性料理人として1980年代に2年間、フランソワ・ミッテラン仏大統領(当時)に仕えたダニエル・デルプシュをモデルとしている[3]。第38回セザール賞で主演のカトリーヌ・フロが主演女優賞にノミネートされた(受賞はならず)。” ウィキペディアより引用
大統領のお住まいエリゼ宮殿の主厨房が作る料理は、ゴージャスだが顔の見えない料理。美味しいけど名無しの権兵衛。料理は、歴史、地域、個人の食育環境など文化が作り出すものなのに、誰が作っても同じ物が出てくる。
それが嫌になった大統領が、私的な食卓で食べるものを作ってもらう料理人をミシュラン星付きシェフのロブションさんに紹介してもらったら、女性だった。その人がダニエル・デルプシュさん。
主厨房は伏魔殿で、まじプライド高い人達がせめぎ合う。だって評価でないもんね、名無しの権兵衛の料理だと。そこに個性バリバリのダニエルさん登場、ハブられる。
ダニエルさん、黙々と仕事する。最初は得意の家庭料理から。家庭料理といってもとんでもなく凝っているのですが、自分ベース。大統領に最高のランチを、と探求していくうちに、大統領が料理本が好きだったこととか、出身地方とか、大統領の食文化背景を知る。食事がさらに文化に沿ってくる。大統領嬉しい、ダニエルさん嬉しい。
そのうち、主厨房にさらにムカつかれる。デュバリーなんてあだ名を付けられる(ルイ15世の愛人、つまり大統領の愛人と)。まじ恐ろしい。
やられてムカつくけれど、毎日大統領のご飯を作りながら、自分のキッチンチームを丁寧に育てる。
作り方を丁寧に教えて、信じて任せて、一緒に感動して、褒める。誰よりも必死で”大統領に、大統領にとって美味しいものを”を作る努力を続ける。チームは育ち、なれあいではなく、目標達成のためのチーム になる。
うん、ドラッカーだ。
人は仕事を通じて社会に居場所を見つける。そして、チームは自然に育つものではないし、人から始めちゃダメで、なされるべきものを考えて、そのための活動を考える。
チームの活動を、大統領の美味しいと思うおうちごはんを作り出すキッチン仕事、と定義する。それを一緒にやりながら、考えて、支えて、時にはダッシュして濾し布を取りに行き、電話しまくって大統領の好きだという料理本の謎料理を紐解いて、チームと何度も繰り返して、美味しいものを完成させていく。プロセスを通じて、チームも育つ。
チームビルディングのワークショップとか、チームビルディング講座や、モチベーション上げる講師を呼んで話してもらうとか、やったつもりの投げ込みと次元が違う。現実と現場感のリアリティ。
もちろん映画としてもステキです。フランスっぽいちょっと暗いところも、料理の無駄の多さも、トリュフとフォアグラとバターと赤ワインの絵の美しさも、見どころです。何度見てもうむーって思うこの映画。歴史を言葉遊びもからめて教養で遊んだり、なんかかっこいいなぁフランス人。