2017年4月13日木曜日

ピアの事業には、イノベーションなんて一つもない。大学院で気づいたこと。

ピアの事業にはイノベーションなど一つもありません。

顧客の捉え方と、事業のビジョン(あり方)については、ちょっとだけ革新的かもしれませんが、それは思想の話です。具体的な手法は、商品をOEMで生産し、それを使った美容室を運営し、お客さまからお代をいただく。至ってシンプルで使い古されたお商売のレシピに沿ってコツコツと日々お仕事をさせていただいています。

私は社会人入学で大学院に入りました。技術の価値最大化を考える専攻で、ものづくり系の現実的な経済学であるMOT(技術経営)というコースです。その大学院における私の研究テーマは、ソーシャルビジネス領域におけるものづくりの価値最大化について。

ソーシャルビジネスとは、社会の課題(こまりごと)を事業の手法を使って解決しながら仕事を作っていくことです。私もこの領域のはじっこで、患者になったときに生じる生きにくさを解決する仕事を事業化しています。道半ばですが、それでも15年近くやってきました。

大学院に入ったのは、日本のものづくりの人と話が通じなかった体験がきっかけです。現場のニーズを、必要なプロダクトの形が想像できるようにものづくりの人たちに伝えたら、いいものづくりができるのではないか。実際の現状を知らないものづくり現場の人達が、想像したりヒアリングするよりも、私達がそれをものづくり現場の人に伝えたらよいのではないか、と。そう気づいても、私にはものづくりの人の言語がわからなくて、世界観を知る必要がありました。

キーワード的に言えば、協働/協業/コンソーシアム、なんていわれることですが、それを中小零細企業と簡単に、かつ、現実的なお商売に結びつくような商品とサービスづくりがしてみたい、と思い、門外漢の静岡大学工学部工学研究科事業開発マネジメント専攻、という堅苦しい名前の専攻に飛び込みました。

大学院での研究中に気づいたのですが、私たちは日々かなりニッチで、かつ本質的なニーズに出会っているということです。たとえば、乳がんになる人は毎年7万人ほどですが、この人達が困ること、例えば脱毛とか、乳房切除とか、を実際に見て、それを体験している人たちに会い、話を聞いて、少し筋の良い質問をして、実際に何がどのくらいあると暮らしやすいのか、を評価しているのです。

入試で、あなたの事業にはイノベーションがありませんね、真似されそうな仕事ですね、マーケットが小さいですね、と言われました。在学中も、イノベーションはどこに発生するのか、とよく問われました。

私のやっている事業にはイノベーションなど一つもなく、やろうと思ったら真似ができて、マーケットはニッチで、永遠にマスにはなりません。でも、確実に困りごとが発生していて、今ある旧来の手法では解決されていないので今でも困っている人がいます。

イノベーションなんて一つもなくても、ちゃんと役に立つことが大事なんですよ。
かっこいい横文字とスケールアウトがなくてもね、これをちゃんとやりたいです。仕事で。


これは現在試作中の新商品の裏側。一個目なので、工場の試作担当さんが手縫いで作ってくれた力作です。現在量産化に向けた作業中です。これも、イノベーションが一つもない、枯れた技術の組み合わせです。でも、役に立つんです。